ギャラリーギャラリー企画展
痕跡あるいは不在 山下裕美子×濱田菜々 いずれも新鋭の、陶芸家・山下裕美子とファイバーアーティスト・濱田菜々の2人展を企画しました。 山下は原型の上に和紙と泥漿を多層に重ね、焼成の過程で和紙が焼けつくすことによって、 あたかも紙が焼き物に置き換わったかのような陶芸作品に取り組んでいます。 濱田は水に溶ける布にミシンでランダムな縫い目を重ね、布を溶かすことで糸の重なりだけを残すファイバーアート作品を 手掛けています。いずれも繊細さを作品の持ち味としていますが、その繊細さは泥漿や縫い目の支持体となった 紙や布が失われることによって実現しているといえましょう。 つまり、失われた紙や布の痕跡を、わたしたちは作品のかたちとして見ているのですが、 まさにその紙や布が不在であること、すなわち支持体を失ったことによって、作品は 軽やかな儚さを帯びているのではないでしょうか。 失うことによって何かを得る、というあり方は、失うことへの恐れが根強い現代において、示唆的でもあると感じます。 そうした仮託は措くとしても、陶とファイバーという素材の違いをこえて、繊細な軽やかさを共通の特徴とするふたりの作品は、 ギャラリーギャラリーの白い部屋で一段と美しさを際立たせることでしょう。 (フリーライター 深萱真穂) |